議決書(後編) −萩谷麻衣子氏の行為への弁護士会の判断−

第4 萩谷麻衣子の答弁及び反論の要旨

1 懲戒請求事由1について

 否認する。電子メールのやりとりは乙1のとおりであり,何ら脅迫・親権妨害・恐喝となるものではない。

 Bは,別居後も子供とAとの面会交流に応じていたところ,Aは平成27年○○月○○日に,突然児童相談所にBが子供達に対し虐待を行っている旨の通報をしたが,これは理由のないものであった。Aには代理人が就いていなかったこともあり,このような両親間で確執のある中で子供達に与える精神的影響を懸念し,萩谷麻衣子は乙1のように離婚の条件とともに面会交流のル−ルもきちんと決めた上で面会交流を実施したいと告げたものである。

2 懲戒請求事由2について

 否認する。萩谷麻衣子は,面会交流を実施するにあたり,子供達の体調をAに伝えておいた方がいいと考え,Aの代理人であるCを通じて,電子メールで「長男が保育園の遠足で友達とトラブルがあり,頭を3針縫う怪我をしたこと」を連絡した(乙2)。すると,Aはこれを逆手にとり,離婚訴訟において,「長男が怪我をした事実を10日以上も隠して受傷の経緯を明らかにしなかった状況から,Bによる虐待の疑いがある」と主張して,児童相談所への文書送付嘱託申立を行った。

 これに対して,萩谷麻衣子が提出した意見書が,Aが問題としている 「調査嘱託及び文書送付嘱託についての意見書2」(乙4) であり,これが脅追行為にならないことは明らかである。

3 懲戒請求事由3について

 否認する。なお,萩谷麻衣子が依頼者であるBに話した内容は,公然性がなく名誉毀損を構成しない。

4 懲戒請求事由4について

(1)及び(2)について

 争う。誤記の箇所があったとしても,訴訟遂行上何ら影響していない。

(3)について

 否認する。仮に何分か遅刻したとしても,裁判所の手続に遅延は生じていないし,手続に何ら影響していない。なお,萩谷麻衣子は5分以上遅刻しそうな場合は,必ず事前に裁判所に連絡を入れている。

(4)について

 否認する。Aが提出したローン返済表がその場で確認できなかっただけで,意図的に「まだ受け取っていない」と虚偽の主張をした事実はない。

(5)及び(6)について

 面会交流日の調整等を怠ったことは否認する。萩谷麻衣子は,Cから平成28年○○月○○日に送信されてきた面会交流日の調整依頼の電子メール(乙5の1)に対して,同年○○月○○日に返信(乙5の2)しており,この結果,同年○○月○○日と同月○○日に面会交流日が決まり,両日とも実施されている。

(7)について

 否認する。

(8)について

 争う。確かに,証拠番号に記載すべき事件番号のうち,反訴の事件番号を「第○○号」とすべきところ「第○○号」と誤記したが,本訴事件の番号に誤りはなく,事件としての特定には支障のないものであった。

(9)について

 否認ないし争う。財産分与の対象となるB名義の銀行口座は全て提出済みであったにもかかわらず,Aは執拗に他にもある筈だと主張し調査嘱託を行うなどしていたが,その結果,Bが口座を隠匿している事実がないことが明らかとなっている。財産分与において,相手の金融機関の口座の特定はそれを主張する側の責任において行うものであり,萩谷麻衣子が自己の依頼者の口座について他に存在するかどうか確認して相手方に回答しなかったとしても非行には当たらない。

(10) について

 争う。Aは離婚訴訟においても,「平成28年○○月○○日付け準備書面の中で,萩谷麻衣子は面会交流事件が審判移行になっていないのに,審判移行になったと虚偽の主張をしている」と訴えていた。この「審判移行した」との記載は萩谷麻衣子の勘違いであったが,上記Aの主張について,担当裁判官も「別件で面会交流事件が係属しているかどうかが重要であって,裁判所はそれが調停であるか審判移行したかは重要な問題だと捉えていない」と一蹴した。

(11)について

 争う。Cより提出された書面に,「調査嘱託及び文書送付嘱託申立」をする旨の主張があったことから,これに対し萩谷麻衣子は意見書(乙6) を提出したものであり,非行には当たらない。

(12)について

 争う。作成日空欄で提出した証拠説明書は乙7であるが,これは作成日空欄でも証拠の特定には支障がないと考えたためであり,裁判所からも問題がある旨の指摘も受けていない。事件番号の記載は,上記 (8)と同様,反訴の事件番号に誤記があるが,本訴事件の番号に誤りはなく事件の特定上支障は生じていない。

(13)について

 争う。上記(8)及び(12)と同様である。なお,書類提出書(乙12)の事件番号の記載には誤記はなく,Cから問題なく受領書も届いているので,事件番号の誤記が訴訟に悪影響を与えた事実もない。

(14)について

 争う。仮に間違えたとしても前後の文章から意味は通じており,Aも単なる間違いであることを認識していて問題も生じていないから,非行には該当しない。

 (15)〜(17),(20),(22)について

 争う。上記(13)と同様であり,本訴事件の番号,書類提出書の事件番号の記載により,事件は特定されている。

(18)について

 争う。仮に誤記があったとしても非行には該当しない。

 (19)について

 争う。甲号証と乙号証を間違えて提出したが,その後正しく訂正したものを差し替えて提出している。

 (21)について

 争う。誤記は事実であるが,非行には該当しない。

(23)について

 争う。萩谷麻衣子は,平成28年○○月○○日にBの陳述書をFAXで提出したが,その後同月○○日の期日に陳述書のクリーンコピーを持参して提出した。その際,FAX送信の際には添付していなかった別紙を1枚追加して提出したが,提出の際に裁判所とCにその旨告げており,何ら支障は生じていない。

 (24)について

 否認する。萩谷麻衣子は,平成28年○○月○○日の期日に5分程度遅刻する可能性があったため,事前にCに電子メールでその旨連絡した上で,裁判所にも連絡していた。但し,実際には,萩谷麻衣子は当日14時の期日に遅刻することなく,裁判官が弁論準備の部屋に入室する14時10分よりも前に席に着いていた。

 (25)について

 否認する。萩谷麻衣子は,平成28年○○月○○日午前10時の期日に出席するため,東京家庭裁判所の1階にて午前9時53分頃Bと待ち合わせた後,一緒に17階へエレベータで上がり,Bを相手方待合室に案内した後に書記官室に入っている。

(26)について

 争う。

(27)について

 平成30年○○月○○日に決まっていた面会交流日を○○月○○日に変更したい旨の連絡をしたこと,その後Aの○○月○○日は不都合であるとの返事を受けて,もとの○○日に実施することとしたことは認め,その余は争う。実施日の変更依頼の連絡は,Bの希望を伝えたものに過ぎない。

(28)について

 否認する。平成30年○○月の面会交流日の候補日は,平成30年○○月○○日にAに対して伝えている(乙21)。

5 懲戒請求事由5について

 争う。甲30号証について,「証拠説明書は裁判所に出されていますか」と確認したことは事実であるが,未提出であることを確認し,次回期日までに提出することになったもので,何ら非行行為ではない。

6 懲戒請求事由6について

 否認ないし争う。委任状の日付を故意に空欄にして提出した事実はない。夫婦関係調停も婚姻費用分担調停も既に手続的に問題なく終了している。

7 懲戒請求事由7について

 否認ないし争う。萩谷麻衣子がAを威嚇した事実はない。Aが面会交流審判の席で,これまで萩谷麻衣子が何度も書面提出期限を守らない等事実ではないことを主張したので,審判終了後に「いい加減なことは言わないで欲しい」と伝えただけである。その場には,書記官もAの代理人も同席していた。

8 懲戒請求事由8について

 否認ないし争う。萩谷麻衣子が意図的にあるいは不注意によりAからの電子メールに返信せず放置したことは否認する。
 Aは,何のアポイントもなく突然書類を持参の上萩谷麻衣子の事務所を訪れてきたため,事務員が書類は事務所のポストに入れるように伝えてポストに投函して貰ったものである。

 萩谷麻衣子としては,Aに対して電子メールで受領を伝える義務もないのであり,確実に届けたことの証拠を得たいのであれば,書留で郵送するか,書面提出書兼受領書を同封する等の方法があるのであるから,それによるべきである。

 なお,萩谷麻衣子は,その後Aが再度電子メールで受領確認を求めてきたため,電子メールで受領の旨を返信している。

9 懲戒請求事由9について

 否認ないし争う。仮に,萩谷麻衣子が,離婚訴訟の担当裁判官に対し,別の手続についての裁判所とのやりとりについてここでは話せないと発言したとしても,弁護士としての品位を害する非行ではない。裁判所と陰で密談しているような事実はない。

10 懲戒請求事由10について

 争う。面会交流審判(乙14)では,「相手方は,申立人が,未成年者らの学校及び保育園の行事に参加することを認めなければならない」としているが,その趣旨は,BはAが子らの学校・保育園の行事に参加することを妨げてはならないということであって,積極的にAに参加を促す行為をしなければならないということではない。萩谷麻衣子は,Aに対し,BがAに授業参観の内容を通知しなかった理由を回答する義務を負うものではない。

 また,面会交流審判(乙14)では,BがAに対し子らの保育園・学校の行事予定表を送ることを義務づけてはいない。依頼者の義務ではないことについて,代理人である萩谷麻衣子がAに回答する義務はなく,返信しなかったことが弁護士として品位を害するものではない。

11 懲戒請求事由11について

(1)について

 萩谷麻衣子が甲11の電子メールを見落とし又はその存在を失念したとの主張は否認する。萩谷麻衣子は,翌日にはBに甲11の電子メールを転送して伝えている(乙16)。

 また,平成29年○○月○○日の集合時間の問い合わせは,宿泊面会実施にあたり,Bが集合時間について間違いがないように最終確認したいとのことだったため,AにBからの電子メールを転送して確認しただけである。引渡・受け取りの時間を直前に再確認することは何ら非行行為ではない。

(2)について

 萩谷麻衣子が甲13の電子メールを平成29年○○月○○日の午後6時までに見ていないことは認める。平成29年○○月○○日は,宿泊面会の最終日で,午後6時に子供の引渡をする約束であった(甲11)。この日は土曜日で萩谷麻衣子は事務所で午後1時頃まで執務した後,所用で事務所を離れた。よって,その後はAの電子メールを見ていないし,見られる状況ではなかった。

 同日の午後6時過ぎ,Bから「約束の時間を15分過ぎたが,Aと子供が引渡場所に現れない」との連絡があった。萩谷麻衣子は,BからAの携帯電話番号を聞き,午後6時27分に電話をかけ,25秒間呼び出しをしたが繋がらなかった(乙17)。また,午後6時28分にAの携帯番号にショートメールを送ったが(乙18),何の返事もなかった。

 萩谷麻衣子がAと連絡が取れないことをBに伝えると,警察に相談してみるとのことだったため,これを容認した。Bが警察に相談したことには,以下のような事情がある。即ち,宿泊面会交流の前日である平成29年○○月○○日に,Bは児童相談所より「Aから,Bの父親が子供達に虐待をしているという通報があったので,話を聞きたい」との連絡を受け,同日,児童相談所の担当者の来訪を受けるということがあった。宿泊面会の前日にこのようなことがあったため,Aが約束の時間に現れず,萩谷麻衣子の電話にも出ず,ショートメールにも返信がないため,万が一でも子供達を返さないという ことがあるのではないかと危惧したため,警察に相談したものである。

 このように,萩谷麻衣子は,土曜日の夕方で通常執務は行っていないところ,とれる限りの手を尽くしたものである。

 Aは萩谷麻衣子の事務所の電話番号を知っており,休日は事務所の電話を萩谷麻衣子の携帯電話に転送しているので,電子メール以外による連絡は可能であった。

 Aは,土曜日の夕方引渡の約束時間の2時間弱前になって,萩谷麻衣子の仕事用のパソコンのアドレス宛に遅れる旨の電子メールを送信したのみであり,それが2時間弱の間にBに伝わらなかったとしても,「電子メールを迅速に,かつ漏れや間違いなく依頼者に対して伝える職務上の義務を負っている」ことを怠った非行があるとの主張は理由がない。

 また,BとAの間の信頼関係は完全に破壊されており,離婚訴訟及び監護者指定の審判において,激しく親権及び監護権を争っていたことから,Aが電話に出ずシュートメールにも返信しなかった以上,Bが警察に相談に行くことを容認したことはやむを得なかったものである。

12 懲戒請求事由12について

 否認ないし争う。Aからの甲11の電子メールに対しては,その翌日に乙19の電子メール(子供が面会できない体調だと判断したときのみ連絡する旨)を送信して回答している。

13 懲戒請求事由13について

 平成29年年末からの冬期休暇中に宿泊面会が実施できなかったことは認めるが,その余は否認する。萩谷麻衣子は,乙20の1〜12のとおり,Aとの間で,平成29年○○月○○日以降,電子メールをやりとりして冬期休暇中の宿泊面会日の調整を行ったが,双方の都合が合わず実現しなかったものである。 それにもかかわらず,Aは,宿泊面会が実施されなかったことを理由として東京家庭裁判所に履行勧告の申立をしたり,面会交流調停の申立を行うなどしたものである。

 このように萩谷麻衣子が冬期休暇中の宿泊面会実施の調整を試みていたことは明白であるにもかかわらず,Aが冬期休暇中の宿泊面会が実施できなかったことを懲戒理由とするのは悪意ある申立であり,法律上も事実上も正当な理由がないことは明らかである。

14 懲戒請求事由14について

 萩谷麻衣子がAとの間でBの代理人として面会交流日程の調整を行っていること,萩谷麻衣子が毎月前月○○日頃までに翌月の面会交流実施日をAに提示していることは認め,その余は否認する。

 平成30年○○月の面会交流の候補日は,同年○○月○○日にAに対して伝えている(乙21)。面会交流審判では,前月○○日までに翌月の面会交流候補日を伝えることは条件とされていない。萩谷麻衣子は,面会交流の実施を円滑にするために,前月○○日頃までにBから希望を伝えて貰って,翌月の候補日をAに伝えることにしているだけであって,これが数日遅れただけで弁護士の品位を失うべき非行に該当するものではない。

15 懲戒請求事由15について

 否認する。

16 懲戒請求事由16について

 Aが萩谷麻衣子に対して,平成30年○○月の面会交流の日程について電話か郵便で回答するよう求めてきたこと,同年○○月○○日の時点で萩谷麻衣子が回答をしていないことは認めるが,その余は否認ないし争う。
 萩谷麻衣子は,平成30年○○月の面会交流日程について,同年○○月○○日の電子メールで提示している(乙22)。また,同年○○月○○日に萩谷麻衣子からAに対して,面会交流の日程を承諾した旨を伝え,支障なく実施されている。
 Aは,(長男の治療に必要であるとして) Bから受領した長男の保険証を返還しないことから,萩谷麻衣子が平成30年○○月○○日以降電子メールで何度も返還を督促したところ,Aは,萩谷麻衣子の事務所に電話をかけてきて,「○○月○○日以降メールが届いていない。メールアドレス変更は事前にメールで伝えるように。そうでなければ自分の方では迷惑メール扱いで受信しない。それができないならメールを使うな。以上を了解したか電話か手紙をよこすこと。または留守番電話にメッセ−ジを入れること。返答がないときは懲戒を申し立てる。」と伝えてきた。しかし,萩谷麻衣子はメールアドレスを変更した事実はないし,○○月○○日以降にA宛て送信した電子メールがエラ−になった事実もない。また,同じメールアドレスから東京弁護士会宛にも送信するなどしているが,全て連絡できている。Aは,萩谷麻衣子から何度も長男の保険証の返還を電子メールで請求されているにもかかわらず返還しなかったことを非難されないように,「メールが届いていない」と言っているとしか考えられないものである。

17 懲戒請求事由17について

 Aが平成30年○○月○○日,萩谷麻衣子の事務所の事務員に架電したことは認め,その余は否認ないし争う。萩谷麻衣子の電子メールがウイルス感染により使用不能となった事実はないし,萩谷麻衣子がメールアドレスを予告なく変更したこともない。

 萩谷麻衣子のメールは,平成29年○○月以降同じメールアドレスから送信しており,Aとの間で問題なく連絡できていたものであるし,同じメールアドレスを仕事関係でも利用しているが何ら支障なく利用できている。それにもかかわらず,Aは,平成30年○○月○○日以降電子メールが届かないと言い張るようになったものである。

 また,平成30年○○月の面会交流日については,同年○○月○○日の面会交流調停期日において,調停委員を介してAに伝えられ,支障なく実施されている。

18 懲戒請求事由18について

 萩谷麻衣子が甲18の書面をAに送信したことは認める。これは,Bが円滑に監護者としての義務を果たすために行ったものであり,面会交流自体を拒否したものではない。茶話会や保護者会がその後に実施されない授業参観については,これまでAの参加を拒否していない。

19 懲戒請求事由19について

 否認する。封書の郵便料金が80円から82円に値上がりした際に大量の少額切手を購入したので,その余りを貼ったことがあるだけであり,Aの邪推に過ぎない。

 

第5 証拠の標目

 別紙証拠目録記載のとおり。

 

第6 当委員会第2部会の認定した事実及び判断

1 関係各証拠によれば,前記前提事実はいずれも認められる。前提事実に基づき,以下のとおり判断する。

2 懲戒請求事由1について

(1)Aが指摘する電子メールのうち,問題とする箇所の記載内容は,以下のとおりである。

々達院Σ毅韻療纏劵瓠璽

 「面会交流のル−ル作りと財産分与については並行してお話をさせていただきたく思いますので,先日こちらからお伝えした内容についてA様の方でも早急にご検討いただきたくお願い申し上げます。もし・・・裁判前の合意が難しいということでしたら,財産分与と面会交流について離婚訴訟の手続の中で解決したく思います。」

甲2の電子メール

「9月中に離婚が成立すれば,早ければ9月あるいは10月上旬からスム−スに面会交流の実施ができると思います。」

9達海療纏劵瓠璽

「早期のお子様との面談が実施されたら,Aさんはこちらの提示した離婚条件を承諾されるのでしょうか?」

 (2)上記Aが問題とする萩谷麻衣子の電子メールの内容は,離婚を巡る紛争における交渉の際の表現として相当性を欠くものではなく,「面会交流の開始と引き換えに財産分与の条件を呑むこと」を強要するものとは認められない。

3 懲戒請求事由2について

 A・B間では,子供の保育園での怪我を巡って,Aが児童相談所に「Bが子供を虐待している」旨の通報をする等のトラブルが生じており,そのような状況下で,離婚訴訟において,Aから「Bによる虐待疑惑」を理由に児童相談所宛て文書送付嘱託が申し立てられたことを受けて,萩谷麻衣子が乙4の意見書を提出したことが認められる。

 このような紛争状況の中で,萩谷麻衣子が訴訟において提出した乙4の意見書の中で上記の主張を行ったとしても,これが訴訟における代理人の主張として相当性を欠くものであったとは認められず,不当な脅迫行為であるとも認められない。

4 懲戒請求事由3について

 Aが主張する事実を認めるに足りる証拠はないし,そもそも,萩谷麻衣子と依頼者であるB間の会話内容がAの名誉を毀損するということ自体,特段の事情のない限り考えにくいことである。

 したがって,懲戒請求事由3は認めることができない。

5 懲戒請求事由4について

(1)Aが問題とする事務ミス等は,(1)〜(28)の28項目に亘るが,これらを大まかに分類すると以下のとおりである。

仝躓や間違いを問題とするもの

(1),(2),(8),(10)〜(22),(26)

遅刻を間題とするもの

(3), (24),(25)

失念若しくは虚偽主張を間題とするもの

(4),(7),(23),(28)

ぢ嬲・事務ミスを問題とするもの

(5),(6),(9),(27)

(2)誤記や間違いについて((1),(2),(8),(10)〜(22),(26))

 Aが問題とする誤記や間違いは,一つ一つは些細な誤記や間違いに過ぎず,これら誤記等によって裁判手続上支障が生じた等の事情も認められないから,これら些細な誤記等が度重なったからと言って,これが非行に該当するとは認められない。

(3)遅刻について((3),(24),(25))

 萩谷麻衣子の遅刻は,いずれも数分程度のものと認められるから,この程度の遅刻が複数回あったからといって,非行に該当するとは認められない。

(4)失念若しくは虚偽主張について((4),(7),(23),(28))

 平成30年○○月の面会交流日程の提示(28)については,萩谷麻衣子は平成30年○○月○○日にAに連絡していることが認められる (乙21) から,連絡を失念したと認めることはできない。

 その余((4),(7),(23))については,萩谷麻衣子がこれらの事項を失念したからといって,それが非行に該当しうるようなものとは認められない。また,萩谷麻衣子が,Aが指摘する事項について知りながら意図的に虚偽の主張をしたと認めるに足りる証拠もない。

(5)怠慢・事務ミスについて((5),(6),(9),(27))

 萩谷麻衣子は,面会交流日の日程調整については,適宜これを実施し,面会交流も現に実施されていることが認められる。また,離婚訴訟の弁論期日における約束については,約束の事実を認めるに足りる証拠はないし,Aの指摘する事実があったとしてもそれが直ちに非行に該当するものでもない。

(6)以上のとおりであり,いずれも非行に該当するものとは認められない。

 6 懲戒請求事由5について

 Aは,離婚訴訟の準備手続において提出した書証に関する証拠説明書を当日提出しなかったこと,及び証拠説明書の提出の有無を裁判官に対して質問したことが非行に該当すると主張するが,Aの指摘する事実自体が,非行に該当するものとは認められない。

7 懲戒請求事由6について

 Aは,婚姻費用分担調停事件において裁判所に提出した委任状の日付が空欄であったことが非行に該当すると主張するが,このような事実が非行に該当する余地はない。

8 懲戒請求事由7について

 萩谷麻衣子が,Aに対して,「いい加減なことは言わないで欲しい」 旨を発言したことは認められるものの,Aを威嚇する言動をしたと認めるに足りる証拠はない。

9 懲戒請求事由8について

 Aは,事前の連絡等もないまま,一方的に書類を持参の上,萩谷麻衣子の事務所のポストに投函したものであり,書類受領確認依頼の電子メールもAが一方的に送信したものであることが認められる。

こ のような場合,特段の事情がない限り,萩谷麻衣子には,Aの電子メールに対して返答すべき義務があるとは認められないし,その後平成28年○○月○○日には,Aからの求めに応じて受領した旨の返信も行っているのであるから,非行に該当する事実は認められない。

10 懲戒請求事由9について

 Aが指摘する萩谷麻衣子の発言が虚偽であると認めるに足りる証拠もないし,その発言内容も相当性を欠くなど非行に該当する余地があるものとも認められない。

11 懲戒請求事由10について

 面会交流審判では,学校行事への参加に関して「相手方(B)は,申立人(A)が,未成年者らの学校及び保育園の行事に参加することを認めなければならない」とされているだけであり,BがAの学校行事への参加に積極的に協力すべき義務を負っているものではないし,萩谷麻衣子が,A・B間の連絡窓口になっているからといって,Aからの上記質問事項について回答しなければならない義務を負っているものでもない。

12 懲戒請求事由11について

(1)Aは,Aが平成29年○○月○○日に送信した甲11の電子メール(○○月の宿泊面会交流に関する連絡)について,萩谷麻衣子がその存在を見落としまたはその存在を失念したこと,及びAが甲11で宿泊面会交流の実施時間を既に連絡済みであったにもかかわらず,萩谷麻衣子は実施時間を間い合わせる甲12の電子メールを送信したことを問題とするものである。
 しかしながら,萩谷麻衣子は,Aから甲11の電子メールを受信した翌日には,Bへ転送して連絡している(乙16)ことが認められるから,「その存在を見落としまたは失念した」との事実は認められない。
 また,既に連絡を受けていた面会交流の実施時間について,重ねて確認したからといって,そのことが直ちに非行に該当するものではない。

 (2)Aは,平成29年○○月に実施した宿泊面会交流において,AがBに子らを引き渡すべき時間が1時間遅れる(18時から19時に遅れる)旨の電子メール(甲13)を萩谷麻衣子に送信した(○○月○○日16時17分送信)にもかかわらず,萩谷麻衣子がこれを見落とし,時間(18時)になっても待ち合わせ場所にAが現れなかったことに対し,Bに警察に「子供が誘拐された」と申し出ることを指示し,警察を巻き込んだ騒ぎを引き起こす結果になったことは,非行に該当すると主張するものである。
 しかしながら,Aが萩谷麻衣子宛てに電子メール(甲13)を送信したのは,子らの引渡予定時間の直前であり,しかも当日は土曜日であって,萩谷麻衣子は当該時間帯には事務所を不在にしていたため,電子メールを確認することが困難な状況にあったことが認められる。加えて,萩谷麻衣子は,Bからの(Aが約束の時間に現れないとの)連絡を受けた後,Aの携帯電話に架電したりショ−トメールを送信する等してAとの連絡を試みていたことが認められ,他方,Aとしても事務所に架電する等の措置をとれば萩谷麻衣子と連絡を取ることが可能な状況にあった (当時,事務所にかかってきた電話は萩谷麻衣子の携帯電話に転送されるようになっていた)にもかかわらず,Aは甲13の電子メールを送信した他には連絡手段を何ら取っていないこと等の事情も存することが認められるから,萩谷麻衣子が,甲13の電子メールを直ちに確認しなかったからと言って,そのことが直ちに非行に該当すべき事由となるものではない。
 また,警察への連絡については,萩谷麻衣子は,Bが警察に相談に行くことを容認したことは認められるものの,より積極的にBにこれを指示したと認めるに足りる証拠はないし,当時のAとB間での紛争の状況 (離婚や子の親権・監護権を巡って激しく争っている最中であり,特に子の監護に関しては,Aから児童相談所に虐待通報がなされる等苛烈な対立があったという状況)からして,Bが警察に相談に行く こともやむを得ないものと言うべきであるから,萩谷麻衣子がこれを止めずに容認したからと言って,これが非行に該当するものとは認められない。

13 懲戒請求事由12について

 萩谷麻衣子には,Aから一方的に送付されてきた甲11の要求内容に応じなければならない義務がある訳ではないし,甲11に対しては,萩谷麻衣子より翌日返信した乙19の電子メールにて,「子供が面会できない体調の場合には,Aに連絡する」旨を返答しているから,非行に該当する事由は何ら認められない。

14 懲戒請求事由13について

 乙20の1〜20の電子メールのやりとりによると,A・萩谷麻衣子間では,上記冬期休暇中の宿泊面会の実施日について調整を行っていたことが認められるから,この時期に宿泊面会が実施できなかったのは,日程調整が不調に終わった結果に過ぎず,これが萩谷麻衣子の責任によるものであるとは認められない。

15 懲戒請求事由14について

 Aの主張するような「前月○○日までに翌月の実施日を提示する」との確定的な約束があったと認めるに足りる証拠はない。Aは,萩谷麻衣子の甲16の電子メールにおいて,「日程については,Bさんの方から候補日を提示して欲しいとの希望でしたら,Bさんの方で候補日を伝えます。前月○○日までに伝えることは構いませんが・・・」と記載されていることを根拠に,かかる合意があったと主張しているが,甲16の電子メールの上記記載からは,「○○日までに連絡するように努める」という趣旨を超えて,「義務として○○日までに必ず連絡する」旨を確定的に約したとまでは認められない。

 加えて,萩谷麻衣子は,○○月○○日には候補日を連絡しており,連絡が数日遅れたことによって面会交流の実施に重大な支障が生じた等の事由も認められない。

16 懲戒請求事由15について

 Aが指摘するような萩谷麻衣子の発言を認めるに足りる証拠はない。

17 懲戒請求事由16について

 平成30年○○月○○日(○曜日)になされたAの連絡に対して○○日(翌週の○曜日)までに返答がないからと言って,返答が著しく遅れていると評価することはできないし,萩谷麻衣子は○○月○○日(翌週の○曜日)には応諾する旨の返答を行い,面会交流も支障なく実施されているのであるから,非行に該当する事由は認められない。

18 懲戒請求事由17について

 平成30年○○月の面会交流実施候補日については,同年○○月○○日に実施された面会交流調停期日においてBから調停委員を介してAに連絡されたか,あるいは同日付けで萩谷麻衣子からA宛てに送信された電子メール(乙25)によって,Aに伝達された結果,支障なく実施されたことが認められる。

 なお,Aは,萩谷麻衣子が予告なくメールアドレスを変更したため自分への電子メールが届かなくなったとも主張するが,そのような事実を認めることはできない。

19 懲戒請求事由18について

 甲18の書面は,当該授業参観の後に茶話会及び保護者会が開催されることとなっていた関係上,Bの希望として「遠慮頂きたい」旨を申し入れたものであることが認められ,このことがAの参加を正当な理由なく妨害したものであるとは認められない。そして,このような事情のない他の授業参観に関しても,Aの参加を正当な理由なく妨害した等の事情は認められない。

20 懲戒請求事由19について

 Aが主張する横領行為を疑うに足りる事情は存しないし,これを認めるに足りる証拠もない。

21 懲戒請求事由20について

 Aが指摘する,甲21の記載は以下のとおりである。

 「審判官の意見も 『現在離婚訴訟において離婚原因を争っている最中で,且つ原告の被告に対する不信感が相当に強い中で,子供達の年齢を考えても宿泊面会を実施することは子供達に精神的負担になる可能性もある』というものであった。」
 上記記載は,審判官から,「両親が激しく争っている状況下で宿泊面会を実施することは子供達にとって精神的負担になる可能性もある」との指摘があったという趣旨に留まるものであり,Aが主張するような「宿泊面会を実施すべきでない」 との意見表明があった旨の記載ではない。また,萩谷麻衣子が,Aが主張するような意図をもって,敢えて虚偽の主張をしたと認めるに足りる証拠もない。

22 懲戒請求事由21について

 Aの甲23による 「面会交流時の連絡方法に関する問い合わせ」の内容は,以下のとおりのものであることが認められる。

 「○○月○○日付の当方宛FAXにおいて,『ショートメールで送ってください』とあります。しかし,ショートメールは電子メールと同様,客観的に連絡が存在したかどうかを確かめる手段がないため,使用できません。あなたはまた,『ショートメールを受け取っていない』『ショートメールを見ていなかった』『携帯電話を置き忘れた』などと言い逃れをして,再び,面会交流時に警察に誘拐通報を行ったりする可能性があります。・・・・・客観的に連絡の存在証明が可能であり,あなたが責任を持って連絡を受けられる,他の連絡手段と連絡先を提案してください。」

 これは,萩谷麻衣子側より提示された「ショートメールでの連絡」に対して,Aが合理的な理由なくこれを拒否し,他の連絡手段の提示を迫る内容のものであり,これに対して,萩谷麻衣子が何らの返答をしなかったからといって,非行に該当するものではない。
 以上より,懲戒請求事由1ないし21は,いずれも認められない。

 

 よって,主文のとおり議決する。

 

平成30年9月21日

 

東京弁護士会綱紀委員会第2部会

部会長 川村理

コメント