居眠りした原田直子日弁連副会長(当時)に関する福岡県弁護士会の議決書
福岡県弁護士会2020年(綱)第4号
議 決 書
懲戒請求者 A
対象弁護士 原田直子
(登録番号18069)
福岡市中央区六本松2-3-6
六本松SKビル9階
弁護士法人女性協同法律事務所
主 文
対象弁護士につき,懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
理 由
第1 事案の概要
本件は,対象弁護士が日本弁護士連合会(以下,日弁連という。)主催のシンポジウムにおいて居眠りをしていたとして,所属弁護士会の信用を害し,弁護士の品位を失うべき非行であるとして,申し立てられた事案である。
第2 懲戒請求の理由の要旨
1 対象弁護士の居眠り行為
(1) 令和元年12月21日,弁護士会館2階「クレオ」で,日弁連主催「家事法制シンポジウム 今改めて「親権」について考える~子の最善の利益の視点から」が開催された。対象弁護士は,シンポジウム冒頭で,日弁連副会長として開会のあいさつを行った。
(2) ところが、対象弁護士は,日弁連を代表して出席している立場にありながら,公然と居眠りをした。その様子はツイッターに掲載されて話題となった。
2 居眠り行為の背景と日弁連副会長としての不適格性
上記シンポジウムは,子供の利益に冷淡であった日弁連がようやく子どもの利益にも目を向け始めたという意味で画期的なものとして,関係者に注目されていた。それは,現在の離婚後単独親権制度によって親から引き離された子ども達,そのような子ども達を思う親や司法関係者にとっては,待望のイベントであり,多くの参加者が強い期待を持っていた。したがって,そのような参加者が,登壇者を馬鹿にするように講演中に居眠りをする対象弁護士の態度に怒りを覚えたのは当然である。
対象弁護士は,共同親権に対して否定的であり,「もっと議論が必要だ。」等と述べていた。それならば,注意してシンポジウムを聞き,今後の議論に役立てるべきであったのに,同弁護士は居眠りをしていた。このことは,同弁護士が,そのような議論をする意思すらなく,子の権利擁護や利益確保に関心がないことを証明している。また,その関心の低さは,同弁護士がこれまで行ってきた女性の権利拡大活動が,弱者救済支援の理想によってではなく,自分が女性であるために行われた,単なる自己利益の実現活動に過ぎなかったものであることの証拠でもある。
弁護士は,自分の利益を実現することを使命としているのではなく,日弁連副会長という立場にある者であればなおさらである。同弁護士の行為が懲戒に相当することは言うまでもないが,日弁連副会長という公職を担う者としても不適格である。
第3 対象弁護士の弁明の要旨
1 懲戒請求の理由の要旨1について
(1) は認める。
(2) は不知。居眠りをした自覚はないが,甲4によれば,居眠りをしたと評価されてもやむを得ない状況であったことは認める。このような態度をとっていたことは,登壇者に大変申し訳ないことであった。
2 同2 について
新聞記事についての客観的記述については認めるが、その他は否認もしくは争う。
第4 証拠
1 懲戒請求者提出分
(1) 甲第1 号証 シンポジウムちらし
(2) 甲第2 号証 シンポジウムタイムスケジュール
(3) 甲第3 号証 CD-R(ツイッターに投稿された動画)
(4) 甲第4 号証 甲3のキャプチャ画像
(5) 甲第5 号証 新聞記事
2 対象弁護士提出分
なし
第5 当委員会の認定した事実及び判断
1 当委員会が認定した事実
令和元年12月21日,弁護士会館2階「クレオ」で,日弁連主催「家事法制シンポジウム 今改めて「親権」について考える~子の最善の利益の視点から」が開催された。対象弁護士は,シンポジウム冒頭で,日弁連副会長として開会のあいさつを行った。
シンポジウム進行中,対象弁護士は,少なくとも数秒間,自席で腕組みをし,うつむいて目を閉じていた。
2 当委員会の判断
(1) 甲3号証及び同4号証からは,同弁護士が睡眠中であったかどうかは判然としないが,シンポジウム参加者及びツィッターへの投稿を見た者の目には,同弁護士が居眠りをしていると映ったと考えられる。
一般に公開された日弁連主催のシンポジウムに,日弁連執行部として参加し,開会のあいさつも行った対象弁護士が,シンポジウムの最中に,周囲から居眠りと見られる行為を行ったことは,登壇者等に礼を失するだけでなく,参加者に不快感を与え,弁護士以外の参加者等に弁護士及び弁護士会に対する不信を抱かせた可能性も否定できない。この点で,対象弁護士には反省が求められる。
(2) しかし,弁護士法が定める懲戒制度は,弁護士会による指導監督によって弁護士及び弁護士法人に使命と職務を全うさせようとするものであるから,弁護士法56条に定める「品位を失うべき非行」とは,社会的な礼儀を欠く行為をすべて含むものではなく,そのような行為のうち,弁護士会に課せられた指導監督の責務を果たすうえで看過できない,著しく相当性を欠く行為を指すと考えられる。
対象弁護士の行為は,それがシンポジウムの進行に支障を来したとは認められないこと,故意によるものとはいえず,これを見た者の弁護士及び弁護士会に対する信頼を毀損するような行為とまではいえないこと,録画されてツイッターに投稿されたのは数秒間の動画であること等を勘案すると,弁護士会に課せられた指導監督のうえで看過できないまでに重大ものとすることはできない。
(3) したがって,対象弁護には弁護士会が懲戒処分を課すべき「弁護士の品位を失わせる非行」があると評価することはできない。よって,主文のとおり議決する。
令和2年5月21日
福岡県弁護士会綱紀委員会第2部会
部会長 林 優
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