埼玉弁護士会、子供から引き離された母親達の訴えに「回答拒否」

母親に「子供とは月4時間しか会わせない」と宣告する弁護士

埼玉弁護士会への訴えで代表を務めた母親

「父母の離婚の際に親子が会えなくなる」という人権侵害について、弁護士会に見解を求めた母親など5人に対し、2021年3月18日、埼玉弁護士会(野崎正会長:当時)が回答を拒否していたことが、本会への情報提供によりわかりました。

5人の親が、2021年3月8日に埼玉県弁護士会会長あてに提出した「質問状」によれば、5人は、いずれも子供との関係に問題がなかったにもかかわらず、離婚調停等での配偶者側弁護士(いずれも埼玉弁護士会所属)の主張や見解によって、極めて限られた時間(月1回数時間など)しか子供と会うことができなくなったと訴えています。数年間にわたり親子が全く会えなかったケースもあるとのことです。

5人の親の代表を務めた母親(右上写真)によれば、母親はかつて育児をほぼ一人で行い、親子関係も良好だったとのこと。しかし2年前に、当時2歳と4歳の子供を配偶者に連れ去られ、「配偶者の弁護士から『母子の面会交流は、月1回4時間でも子供の福祉に反しないから、4時間しか会わせない』と言われた」と訴えています。「子供は毎日、保育園で11時間以上を過ごしているのに、母親とは1か月にわずか4時間しか会えないというのは、理解できません」。

埼玉弁護士会は「回答することはいたしません」

5人の親は「質問状」のなかで「親子の引き離しは、民法766条の趣旨や、親子の不分離などを定めた国連児童の権利条約第9条に反する」と指摘しています。そして埼玉弁護士会に対し、この問題に対する見解を問うとともに、子供の人権と親の人権を擁護する観点から、現状を改善するよう訴え、必要な協力も申し出ています。

埼玉弁護士会が5人の親に対し回答拒否を通告した文書

これに対し埼玉弁護士会は、2021年3月18日付けで「ご連絡」と題した文書(右画像)を送付しました。そして「埼玉弁護士会としての見解をご回答することはいたしません」「今後、同様の質問、要望を頂いても、回答自体をいたしません」と述べ、回答を拒否しました。理由や説明は一切示されませんでした。

埼玉弁護士会には、人権擁護について調査研究を行う「人権委員会」「子どもの権利委員会」「両性の平等委員会」などの委員会が設置されています。上記「質問状」は、5人の親からこれらの委員会にも送付されましたが、いずれも回答は拒否されています。

野崎 正・埼玉弁護士会前会長

回答拒否の判断について、当時、埼玉弁護士会会長を務めていた野崎正氏は、本会の取材に対し「弁護士会は"準公的"とはいっても、私的団体です。国民の負託を受けた組織ではありません。市民の意見をお聞きはしますが、それに従って何かをする義務があるわけではないので、回答できないという回答をしたということです」と説明しました。

「自治権」「独立性」を何に役立てるか

弁護士法第1条は「基本的人権を擁護し、社会正義を実現すること」が、弁護士の使命であると定めています。そして、弁護士会の、国家権力にも服さない「自治権」や「独立性」は、人権を守るという弁護士の使命を実現するために、法律で特別に与えられたものです。

ところが「自治権」や「独立性」を本来の目的とは逆の目的で利用して、「国民の負託を受けていない」から「対応する義務はない」と、理由も示さずに、権利を侵害されている人たちの正当な訴えを無視するようでは、本末転倒になってしまいます。

現在、男女の社会への共同参画が進みつつあります。それに伴って家庭内では、共同養育が広がりました。しかしその結果、父母が離婚する際に、子供が養育者である一方の親から引き離されるという人権問題が深刻化しています。親子が共に時間を過ごし、互いに愛情を与え合うという、子供と親の基本的人権が侵害されているのです。

そのような現状を考えると、5人の親の訴えは、埼玉弁護士会が、離婚時に親子が引き離されるという人権問題に取り組む絶好の機会であったとも言えます。埼玉弁護士会の弁護士による「月1回4時間の面会交流は子供の福祉に反しない」という法的見解により、離婚の当事者ではない、子供の人権が侵害されているのです。ですから、これが個別事件の問題でないことは明らかです。埼玉弁護士会には、弁護士の基本理念に立ち戻ったうえで、人権擁護の観点から誠実な対応を行うことが求められます。


(2021/6/5追記)
埼玉弁護士会は2020年8月25日、刑務所が受刑者を単独室に収容したことについて「他の収容者と接触する憲法上の権利を違法に制限し、人権を侵害した」と、川越少年刑務所に対して「警告」しました。つまり埼玉弁護士会は「受刑者の接触制限は憲法違反だ」と考えているようです。しかし不思議なことに、親子の接触制限が憲法違反であることには、まだ気がついていません。
埼玉弁護士会は、人権侵害について他の団体に「警告」を発する前に、まず、自分たちが人権侵害を行っている当事者であるという意識を持つ必要があると考えられます。

(Visited 1,394 times, 1 visits today)