【書評】『新時代の弁護士倫理』離婚事件の成功報酬は許されるか?

離婚事件における弁護士の成功報酬について、『ジュリスト』の連載を単行本化した『新時代の弁護士倫理』(有斐閣・2020年12月発売)のなかの座談会で言及がありましたので、ご紹介したいと思います。

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石田京子(早稲田大教授):

アメリカについて紹介すると、ABA模範規則においては、刑事事件や離婚、財産分与、扶養額等の家事事件については完全成功報酬が禁止されています(規則1.5条(d))。刑事事件については、成功報酬を生み出すような経済的利益が存在しないこと、家事事件については、弁護士の報酬が離婚を助長したり事件当事者間の調整を妨げてしまうのであれば公序良俗に反することが禁止の理由として説明されています。(中略)イギリスについて紹介しますと、(中略)1998年に離婚関係に関する事件を除く全ての民事事件において完全成功報酬が認められるようになっています。

高中正彦弁護士:

完全成功報酬性、コンティンジェント・フィーに対する何らかの規制は必要なのかどうかについてお尋ねしたいと思います。規制の仕方の1つは(中略)例えば離婚事件は不可とするように、対象事件を限定するという方法があろうかと思います。山中さん、いかがでしょうか。

山中尚邦弁護士

(前略)離婚事件や刑事事件についての(成功報酬の)禁止を導入することについても、個別具体的な弊害が聞こえてきませんから、立法事実がないように思います。

(『新時代の弁護士倫理』(有斐閣)P128~131より)

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このサイトで取り上げてきた、離婚事件の成功報酬による「個別具体的な弊害」は、声が小さすぎて、残念ながら山中尚邦弁護士には届いていなかったようです。

成功報酬は悪徳弁護士を作り出すことがある

離婚事件において子供の連れ去りをした芝池俊輝弁護士や篠田奈保子弁護士、「離婚条件に同意しなければ子供に会わせない」と言って相手方を恐喝する萩谷麻衣子弁護士や原口未緒弁護士、そして親子の面会交流を阻止して成功報酬を受け取ると堂々と掲げるベリーベストという悪徳法律事務所。

悪徳離婚弁護士が次々とこのような反社会的な行為に走っている背景には、離婚後の親権制度の問題があります。そして、日本では他の先進国と違い、家事事件で弁護士が成功報酬を受け取ることが許されているということも、弁護士の反社会的な行動を促していることは、本サイトで指摘してきた通りです。

特に夫婦に子供がいる場合、本来離婚事件においては、離婚後の親子関係に向けて話し合いが行われるべきです。しかし、成功報酬によって弁護士は双方にそれぞれ従属傾向が強くなるため、離婚事件は単に夫婦の争いを激化させ、両者を決裂させるための場となっています。少なからぬ離婚弁護士が、依頼人の要求を達成し成功報酬を受け取ることを優先して、子供の利益を損う不適切な行動を取っています。

このような現状が周知されないのは、当事者の側も、離婚後の親子法制の問題には意識が向くものの、弁護士報酬の問題までは意識しにくいという状況があると思います。しかし、子供の権利意識に乏しい各弁護士会をはじめ、離婚後の親権制度について現状維持を望む弁護士が多いのも、成功報酬制度が前提の議論となっていることも背景にあると思います。

法曹倫理に必要な非当事者や子供の視点

上記の座談会では、弁護士の成功報酬の是非について議論がされていますが、ほぼ一貫して、「弁護士が依頼者を納得させやすいかどうか」といった弁護士の視点中心で話が進んでおり、離婚事件の当事者とならない子供の視点は欠落しています。

弁護士の視点からすれば、離婚事件の成功報酬は都合がいい制度なのだろうと思います。普通の民事事件であれば、まずは依頼人が求めるものを得るために、訴訟で相手方と争って勝たなくてはいけません。しかし離婚事件なら、夫婦間についた火に油を注ぐだけで、依頼者の「離婚」という目的はほぼ確実に達成できます。あまり労力をかけずに依頼人の希望を達成してあげられ、胸を張って依頼人から成功報酬を受け取れるわけです。

一般の民事事件において、弁護士が依頼人とこのような「幸福な関係性」を築けるのは、訴訟で苦労したうえに運良く勝てた場合です。それを労せずして得られるのは、過払い金案件や交通事故案件など、勝敗が予めほぼ決しているものを除けば、民事事件には少ないのではないかと思います。そのため、弁護士の意識が、離婚事件の成功報酬の問題になかなか向かないとしても、やむを得ないのかもしれません。

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