離婚事件で親子引き離しに手を染めたベリーベストの評判

事業モデルは「ファスト法律事務所」

5大弁護士事務所に次ぐ規模に成長

ベリーベスト法律事務所(以下「ベリーベスト」)は2010年に設立され、約10年で弁護士数では5大弁護士事務所に次ぐ規模に成長した法律事務所です。このベリーベストが面会交流の阻止で報酬を受け取るという違法行為を行い、懲戒請求を行ったことは既にご報告した通りです。

ではなぜ、ベリーベストは親子の引き離しに手を染めることになったのでしょうか。その理由を、ベリーベストの創業以来の経緯から探ってみたいと思います。

米最高裁が低価格広告を「認定」

ベリーベストがどこまで自覚的なのかはわかりませんが、事実上のモデルとなっているのは、アメリカの“ファストファッション”ならぬ“ファスト法律事務所”です。

アメリカには数十年前から、争いがない破産事件などについて、低価格で法律サービスを提供する大規模法律事務所があります。パラリーガル(弁護士のアシスタント)を活用して人件費を下げ、業務の定型化と分業、自動化によってコストを下げると同時に、広告で広く顧客を集めて回転率を上げ、低価格化を実現しているのです。このように経済合理性を追求して業務を行う法律事務所を、本サイトでは便宜的に“ファスト法律事務所”と呼ぶことにします。

ファスト法律事務所が、社会に有益な存在であるとして認められた判決がアメリカにあります。1977年の米最高裁で「ベイツ事件」の判決です。ベイツという弁護士が、法律事務所で低価格サービス広告をしたために弁護士会から懲戒処分を受けました。しかし米最高裁は逆にベイツ弁護士を支持する判断を下したのです。

「ベリべ勤務歴」が有利にならない理由

ファスト法律事務所であるベリーベストは、弁護士数で5大事務所に迫る規模になっているとはいえ、業務内容は5大事務所とはかなり異なります。それは、次のような口コミにも現れています。

「同じ内容の仕事を大量に機会的にしなければならず、スキルアップは望めない」とあります。これは業務の定型化や分業により起きることです。

法律事務所は、規模が大きくなるほど、弁護士のレベルや待遇も上がることが多いのですが、ベリーベストは必ずしもそうではありません。むしろ弁護士の間では、ベリーベストは5大法律事務所には入れなかった弁護士の受け皿であると位置づけられています。ベリーベストでの勤務経験は、司法試験の下位合格者であるとの印象を与えることから、その経歴を積極的に公表しない弁護士も多いようです。

「過払い金」のブルーオーシャンでベリべ誕生

簡単に、確実に「勝てる」

日本でファスト法律事務所が生まれたきっかけは、いわゆる”グレーゾーン金利”に関する2006年の最高裁判決と貸金業法の改正でした。

最高裁判決は、それまで法的グレーだった高金利の貸付けを、過去に遡ってクロにするというものでした。それにより、「過払い金返還請求訴訟」(以下「過払い訴訟」)という名の巨大なブルーオーシャン(未開拓市場)が生まれたのです。型通りに進めれば簡単・確実に勝てる過払い訴訟は、業務の定型化や分業を得意とするファスト法律事務所が得意とする業務です。

業務のアウトソース化で「業務停止処分」

2004年設立のアディーレ法律事務所(以下「アディーレ」)と、2010年に設立されたベリーベストは、この過払い訴訟市場で、急速に業績を伸ばしました。これらのファスト法律事務所は、広告マーケティングなどの集客のための手法に長けていたからです。

集客のための広告などの企業努力は、一般企業であればどの会社でも、当たり前のこととして取り組んでいることです。広告を通じて過払い金の存在を世の中に知らしめ、過払い金を取り戻すという法律サービスを世に普及させたファスト法律事務所の役割は、評価されるべき面があります。しかし、弁護士のなかでは軋轢が生じました。

アディーレは、2010~15年の広告マーケティング活動が景表法に違反したとして2017年に東京弁護士会から業務停止の懲戒処分を受けました。また、ベリーベストは非弁提携(弁護士でない者から事件の斡旋を受けること)で東京弁護士会から業務停止の懲戒処分を受けました(処分発表は2020年)。これは、ベリーベストが業務(集客)の一部を司法書士事務所にアウトソース化し、客の斡旋を受けたことにより起きたものです。

「懲戒処分」が一般人にはピンと来ない理由

アディーレとベリーベストは、その行為が社会問題化して懲戒処分されるに至ったわけではありません。アディーレの景表法違反も、法律違反ではあるのですが、一般人の感覚からすると、重い懲戒処分を課す根拠は少しわかりにくかったと言えるでしょう。なぜ、一般企業ならあまり問題とならない行為が、法律事務所の場合は重大な問題とされたのでしょうか。

実は、アディーレやベリーベストを懲戒処分するべきだと考えたのは、弁護士会活動に熱心な弁護士を中心とする、一部の弁護士でした。両社のマーケティングや集客の方法が、そのような手段を持たない既存の弁護士の業務権益を侵すものだと考えられたことが大きかったと思います。つまり、懲戒処分には、守旧派の弁護士と、ファスト法律事務所の権益争いの側面があったのです。

アディーレ・ベリベ対立はなぜ泥沼化したか

「スパイ活動をした」と非難

その後、過払い訴訟の市場は少しずつ縮小していきます。これは、最高裁判決によって“グレー金利”がなくなり、払いすぎた金利を取り戻すという新規訴訟案件が減少したからです。

市場縮小で何が起きたかといえば、今度は、アディーレとベリーベストの争いです。ベリーベストは2019年にアディーレ創業者の石丸幸人氏に対し、「スパイ活動」を理由に懲戒請求を行いました。そしてアディーレは逆にベリーベストに対して懲戒請求と損害賠償請求訴訟を起こすと発表しました。

両社は、2010年代前半の過払い訴訟市場の拡大局面では、共存共栄の関係にありました。しかし、市場の縮小局面では過払い訴訟市場が「レッドオーシャン化」したため、減ったパイの奪い合いでアディーレとベリーベストの利害が対立するようになりました。そのことが、現在アディーレとベリーベストの対立が泥沼化している原因の一つだと考えられます。

次の「事業の柱」が見つからない

過払い金訴訟市場の縮小に直面したベリーベストについては、以下のような口コミが見られます。

「次の事業がはたしてうまくいくか」「債務整理案件が縮小する中、今後の事業を支える柱を展開できていない」といった記述が見られます。

ベリーベストはB型肝炎訴訟(昭和の集団予防接種でB型肝炎に感染した人が国に補償を求める訴訟)なども手掛けていましたが、過払い訴訟ほどの規模がありません。ベリーベストは、過払い金訴訟市場に代わるマーケットを模索し苦しんでいたのです。

過払い金訴訟の事務所から、離婚事務所に変身?

そこで、ベリーベストが次なる事業の柱としてが目をつけたものの1つが、離婚訴訟だったようです。

ベリーベストが扱っている案件のうち、離婚案件がどの程度を占めるについて、正確なデータは公表されていないのですが、最近では、以下のような弁護士のツイートも見られます。

「債務整理(過払い訴訟を含む)よりも離婚が目立つ」というのは、事実であれば驚きです。ベリーベストがかつての過払い訴訟案件専門の事務所から、現在は離婚弁護士事務所へ様変わりしているということになります。

家庭裁判所の「ファスト化」

本来離婚訴訟は、こじれると手間がかかることがあるので、ファスト法律事務所には不向きな面があります。しかしベリーベストは、争いが少ない案件に限定して引き受ければ採算が取れると考えたのかもしれません。

実は、家庭裁判所での離婚裁判等は、裁判というよりは「手続き」に近い面があります。その意味では、家庭裁判所も「ファスト化」しているので、ファスト法律事務所と相性が良かったとも言えるでしょう。例えば子がいる離婚訴訟では、子を連れている親が親権争いなどで勝つことがほぼ決まっています。このように訴訟を始める前から結果がわかりやすい訴訟は、金を借りた側が勝つことが決まっている過払い訴訟と同様に、事務をルーティン化しやすい面があると言えます。

ファスト法律事務所は離婚事件を扱えるか

面倒な事件は「門前払い」か

では、ファスト法律事務所が離婚事件を手掛けることで問題は起きていないのでしょうか。

ベリーベストに相談に行った人による、こんなツイートがありました。

ツイートの内容からすると、この方は離婚時に配偶者に子供を連れ去られて、連れ戻しなどについて相談をしたようです。頑張れば子供を取れ戻せるケースもあります。しかし、それができるかどうかは、普通5分では判断できません。争いがある離婚案件を、ベリーベストが事実上門前払いした様子がうかがえます。

依頼人の利益を最優先しない体質

このような、相談者の利益よりも事務所の利益を優先するベリーベストの体質は、以前から指摘されていました。以下のような口コミがあります。

ベリーベストについて「利益主義的である」「依頼者の利益を最優先していない」などと指摘しています。

ただ、ベリーベストが事実上の門前払いによって相談者を選別するような行為も、それがベリーベストの法的判断であると説明されれば、違法とまで言うのは難しいかもしれません。

「面会交流阻止で成功報酬」という”禁じ手”

オプションで割高な料金を設定

次に料金について見てみましょう。ベリーベストの離婚事件の料金(弁護士報酬)は、ファスト法律事務所としては割高に設定されているように見えます。

特に、離婚事件の弁護士報酬のオプションに関して、「面会交流を一部でも阻止(あるいは実現)」した場合は、別途30万円の弁護士報酬を取る」と定めている部分は割高です。裁判所が子と別居している親の面会交流の希望をそのまま認めることはほとんどありません。ですからベリーベストは、面会交流について争いがある場合、ベリーベストは面会交流を減らしたいと主張するだけで、ほぼ濡れ手に粟で30万円を弁護報酬に上乗せできることになります。

このように、見過ごされやすいオプション部分の価格を割高に設定することにより、実際には高額な料金を安く見せる価格設定方法は、一般企業ではよく行われている手法です。しかし、弁護士報酬は依頼者が価格が適正であるかどうかを評価しにくいので、このような値付け手法は必ずしも適切とはいえないかもしれません。合理性を欠く価格設定は、日弁連の「弁護士の報酬に関する規程」に違反する可能性もあります。

「親子の引き離し」という違法行為に成功報酬を設定

そして更に問題なのは、ベリーベストが面会交流の阻止に成功報酬を設定し、結果的に面会交流の阻止自体を目的とする違法な弁護活動を行っている点にあります。面会交流の阻止は、子供と親の基本的人権を侵害する違法行為です。そして依頼人の利益ではないので、弁護士は面会交流の阻止を正当化できません。

ベリーベストによる面会交流阻止については、こんなツイートもありました。

ベリーベストが面会交流阻止を実際に行っている様子がうかがえます。

おそらくベリーベストは、「面会交流をするのが不適切な事案であったから面会交流を阻止したのだ」と言い訳するでしょう。もちろん、裁判においても、最終的に面会交流を実施しないとの判断がされることはあります。しかし、それは「子の福祉の観点から、面会交流を実施しようとしたが結果的にできなかった」ということであり、当初から面会交流の阻止を企図することとは全く意味が異なるものです。親子の面会交流は、子供の福祉の観点から、これを実施するために双方が努力をし話し合うものです。ですから、面会交流の阻止や親子の引き離し自体を目的化するのは違法なのです。

しかもベリーベストでは、所属弁護士に売上に応じた歩合給が支給されています。所属弁護士は面会交流の阻止をすれば営業成績がアップし、自分の給与を増やすことができるのです。このようなシステムを通じて、ベリーベストは所属弁護士に面会交流の阻止をする動機を与え、組織的に、面会交流という親子の基本的人権を侵害することにより、売上をあげているのです。

ファスト法律事務所は必要か、害悪か

ベリべの食指は子供に向かって伸びている

いつの間に、ベリーベストは、親子の引き離しというような非人道的な行為にまで手を出すようになってしまったのでしょうか。それは、冒頭で紹介したファスト法律事務所の、誕生から現在までの経緯をたどれば見えてきます。

ベリーベストは創業後に過払い訴訟で成長しましたが、守旧派弁護士と権益争いを起こして弁護士会から懲戒処分を受けました。その後、案件も減りレッドオーシャン化した過払い訴訟市場では、アディーレとの泥沼の争いが起きています。こうして過払い訴訟市場という“エサ”を徐々に失い、飢えたベリーベストの食指が、今度は親が離婚する子供や、子供を連れ去られた親に伸びたわけです。

ファスト法律事務所が必要とされる存在になるための条件

面会交流の阻止に30万円の成功報酬を設定しているベリーベストにとって、「親子の引き離し」は「儲かる業務」になりました。そうなると、「そのような業務で利益を上げようとするファスト法律事務所は、本当に世の中に必要な存在なのだろうか」という疑問が湧きます。ベリーベストは単なる害悪なのでしょうか。これは、冒頭に上げたベイツ事件でファスト法律事務所の存在の是非が問われた局面とも似ています。

法律事務所が経済合理性を追求することは、世に法律サービスを普及させるというメリットをもたらす面もあります。しかし社会正義の実現や、依頼人の利益実現という弁護士の公共的な役割と、ファスト法律事務所という経済合理性を信奉するシステムは矛盾するものです。そして矛盾がある場合に犠牲になるのは、前者です。特に家事事件の場合は、当事者ではない子供の利益が侵害されがちです。

公共的責任を伴う弁護士活動に、経済合理性を追求するメリットも取り入れようとするなら、まず、弁護士が依頼人から受け取る報酬の決め方等に関しては一定の規制が必要であると思います。

規制を定める責任を負っているのは、弁護士の唯一の規制機関である弁護士会です。弁護士会がそのことに気づいて動かなければ、今後もファスト法律事務所の行為が、弁護士全体に対する信用を失わせる状況が続くのではないでしょうか。弁護士会はファスト法律事務所と利権争いをしている場合ではありません。弁護士の信用を守るため、ファスト法律事務所の活動を前提とした、適切な規制を用意する責任を負っているのです。

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