【書面公開】ベリーベスト弁護士法人に対する「懲戒請求書」

第一東京弁護士会
寺前 隆 会長殿


2021年2月5日

懲戒請求書

第1 対象弁護士法人
ベリーベスト弁護法人
〒106-0032
東京都港区六本木1-8-7 MFPR六本木麻布台ビル11階
第2 懲戒請求の趣旨
 第一東京弁護士会に所属するベリーベスト弁護法人による、「第3 対象行為」に掲げる行為が「弁護士法人として品位を失うべき非行」に該当するため、ベリーベスト弁護法人に、弁護士法第56条に基づく懲戒処分を下すよう求める。
第3 対象行為
 ベリーベスト弁護士法人は、離婚事件の弁護士報酬を記載したインターネットHP(https://rikon.vbest.jp/fee/)において、「(離婚事件について)面会交流を阻止した場合、または面会交流について相手方の要求が一部でも認められなかった場合に、30万円の成功報酬を受け取る」との内容の報酬基準を示した(甲1および2)。
第4 懲戒請求の理由
1 公序良俗違反
 親と子の面会交流権は、親子関係に基づく基本的人権(自然権)である。静岡地裁浜松支部平成11年12月21日判決は以下のように判示している。

「子との面接交渉権は、親子という身分関係から当然に発生する自然権である親権に基き、これが停止された場合に、監護に関連する権利として構成されるものといえるのであって、親としての情愛を基礎とし、子の福祉のために認められるべきものである。」(甲3「判例時報1713号96頁」

 また、民法766条は、離婚において、面会交流を「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と定めている。
 しかしながら、「第3」において述べた通り、ベリーベスト弁護士法人は、面会交流の阻止という、親子双方の基本的人権を侵害する行為について、30万円の成功報酬を受け取る旨の弁護士報酬基準を提示している。このような契約は、面会交流権という親子の基本的人権を侵害している点において、人倫にもとるものであり、公序良俗に反する契約(民法90条)であるから、無効である。
 そして「面会交流の阻止で成功報酬を受け取る」という、基本的人権を侵害する無効な契約を依頼人と締結し、実際に人権侵害を行いながら、正当な理由なく成功報酬を受け取っているベリーベスト弁護士法人の行為は、基本的人権を擁護し社会的正義を実現するという弁護士の使命(弁護士法一条)に反する行為であり、弁護士の信用を害し、その品位を失うべき非行である。
第5 補足
1 子供の利益との関係
仮に児童虐待等により、子の利益の観点から面会交流が行うことができない場合があるとしても、それは両親が面会交流を実施するために努力したにもかかわらず、実施ができなかったという結果にすぎず、当初から面会交流の阻止を目的とすることとは全く意味が異なるものである。したがって、裁判所により、子の利益の観点から面会交流が実施されないとの決定がされることがある事実は、面会交流の阻止を目的とした弁護士の活動を正当化する理由にはならない。
2 依頼人の利益との関係
ベリーベスト弁護士法人が、依頼人から面会交流の阻止するよう依頼を受けた場合であっても、この依頼内容を達成する目的で弁護士が業務を行うことは、正当な弁護活動ではない。なぜなら、面会交流は依頼人とは別人格である子供と、他方の親の間で行われるものであるから、依頼人の利害に関わるものではないからである。
面会交流の阻止は、依頼を受けた弁護士が追求するべき依頼人の利益ではなく、単なる依頼人の願望に過ぎないのだから、仮に依頼人がそのような願望を抱いていたとしても、弁護士法人は親子の基本的人権を尊重し、面会交流の実現に向けて努力しなければならない。
3 給与インセンティブ
 ベリーベスト弁護士法人は、所属する弁護士に対し、インセンティブ給与を支払っている(甲4)。このインセンティブ給与は、弁護士が依頼人から獲得した売上高(弁護士報酬)に連動するものである(甲5および)。したがって、「第3」に示した報酬基準を前提とすれば、ベリーベスト弁護士法人に所属する弁護士は、子供と同居する親から離婚事件の依頼を受けた場合には、面会交流を阻止して自分の給与を増やすという強いインセンティブを、ベリーベスト弁護士法人から与えられていることになる。
 面会交流の阻止により弁護士報酬を受け取るという契約は、それ自体が公序良俗に反するものであり無効であることは「第4」において述べた通りである。そして、ベリーベスト弁護士法人が法人内部でインセンティブに基づく給与体系を採用し、金銭的動機を与えて所属弁護士に対して反社会的な行動を取るよう促していることを前提とすれば、ベリーベスト弁護士法人の反社会性はより強いものであるといえる。
 弁護士の意欲を引き出すインセンティブの給与体系は、それ自体が直ちに否定されるものではない。依頼人の利益と社会的正義に合致する限りにおいては、弁護士の意欲を引き出す有用なものとなり得る。
 しかし、そのような給与体系を導入する場合には、それが弁護士の倫理に反する結果を招くことがないか、細心の注意が払われなければならない。弁護士が経済的利益を追求するあまり、依頼人に従属し、社会正義の実現をおろそかにする危険性が高くなるからである。
 更に、個人事務所で活動する弁護士とは異なり、ベリーベスト弁護士法人のように、弁護士が分業して組織的活動を行う、規模が大きい弁護士法人においては、個々の弁護士の責任範囲が曖昧になりがちなので、インセンティブ給与体系の設計には特に注意が必要である。
 ところが、ベリーベスト弁護士法人はインセンティブ給与を採用しながら、当然に必要な配慮を怠り、公序良俗に反する弁護士報酬基準を公然と掲げて、所属弁護士の反社会的な基本的人権の侵害行為を事実上容認している。ベリーベスト弁護士法人は、その規模にふさわしい倫理意識やガバナンスの意識を有していない組織であると言える。


以上

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